個人事業主として働いていると、国民健康保険と国民年金の保険料負担が大きいと感じることはありませんか?
過去の記事では、週20時間のパート雇用で社会保険に加入すると、事業所得に社会保険料がかからなくなる仕組みを解説しました。
しかし、実際にはもう一つの選択肢があります。それが「自分が代表となるマイクロ法人」です。
この記事では、週20時間のパート雇用と自分のマイクロ法人、それぞれのメリット・デメリットを徹底比較します。あなたの働き方に合った選択肢を見つけてください。
パート雇用の「見えないコスト」
パート雇用で社会保険に加入すると、事業所得に保険料がかからなくなるため、結果として社会保険料負担が軽くなります。
これは確かに大きなメリットです。しかし、この数字だけで判断していいのでしょうか?
実際には以下のようなコストが発生します。
1. 時間的コスト
- 週20時間(一部の企業では週30時間)の拘束
- 通勤時間
- シフトに合わせた生活
- 個人事業に充てる時間の損失
2. 雇用リスク
会社都合による社会保険への加入が続けられないリスクがあります。
- 業績悪化による解雇
- 週20時間未満への労働時間短縮
- 事業所の閉鎖
社会保険の加入条件を満たす雇用を維持できなければ、第1号被保険者に戻ってしまいます。
これは自分でコントロールできないリスクです。
3. 制度上の制約
雇用される側の義務:
- 36協定による残業の可能性
- 副業禁止規定がある場合も
柔軟性のなさ:
- 収入(給与)を自分で調整できない
- 急な仕事の依頼に対応しにくい
- 働き方の自由度が制限される
マイクロ法人との詳細比較
それでは、自分が代表となるマイクロ法人と、パート雇用を詳しく比較してみましょう。
社会保険料の比較
パート雇用の場合(年収150万円):
- 標準報酬月額:126,000円
- 健康保険料(本人負担):6,451円/月
- 厚生年金保険料(本人負担):11,529円/月
- 健保・厚年合計:17,980円/月(令和7年12月時点)
マイクロ法人の場合(役員報酬月45,000円):
- 標準報酬月額:58,000円
- 健康保険料(本人負担):2,969円/月
- 厚生年金保険料(本人負担):8,052円/月
- 健保・厚年合計:11,021円/月(令和7年12月時点)
※事業所得がいくらでも上記保険料は変わりません
差額:6,959円/月
つまり、社会保険料(本人負担分)で比較すると、マイクロ法人のほうが負担が少ないです(年額換算:83,508円)。
総合コスト比較表
| パート雇用 | マイクロ法人 | |
|---|---|---|
| 初期費用 | 0円 | 株式会社:約17万円〜 合同会社:約6万円〜 |
| 年間維持費 | 0円 | 法人住民税:約7万円+税理士費用 |
| 社会保険料(本人負担分) | 215,760円 | 132,252円 |
| 社会保険料(会社負担分) | 0円 | 132,252円+子ども子育て拠出金2,508円 |
| 時間拘束 | 週20時間(企業規模により週30時間の場合もあります) | なし |
| 収入の調整 | 不可(雇用主が決定) | 自由(役員報酬を自ら決定) |
| 雇用リスク | あり | なし |
| 個人事業への集中 | 制約あり | 制約なし |
| 事務コスト | なし | 自分で手続き、または専門家(税理士・社労士)に依頼 |
| 節税効果 | 給与所得控除 | 給与所得控除、経費計上など |

パート雇用の場合は、社会保険料の半分は会社が払ってくれますが、マイクロ法人の場合は、結局自分で払うことと同じです。
トータルで見ると、雇用の方が社会保険料の負担が少ないと考えられますね。
それぞれメリットデメリットがありますので、一概にどちらがいい、とは結論できないです。
ポイントは、時間拘束だと考えます。
パート労働に時間を使うか?
マイクロ法人の事務コストに時間を使うか?(どうしても最初は時間がかかります)
なお、社会保険加入サービスについては、推奨していません。詳しくは、以下の記事で解説しています。
こんな人にはパート雇用もアリ
1. マイクロ法人の運営に不安がある方
- 会計処理が苦手
- 法人税申告に自信がない
- 行政手続きが煩わしい
2. すでに週20時間(週30時間)程度の労働を希望している方
- 生活リズムを整えたい
- 人との交流を求めている
- 単純作業で気分転換したい
3. 事業所得がまだ安定していない方
- 開業1年目
- 月の収入が10万円未満
- 事業の継続に不安がある
このような方は、まずパート雇用で社会保険に加入し、事業が安定してからマイクロ法人を検討するのも一つの戦略です。
あなたの事業のステージ、目標、ライフスタイルに合わせて、最適な選択をしてください。

マイクロ法人の設立を考えている方に向けた記事もありますので、どうぞ参考にしてください!







