当サイトには広告・プロモーションが含まれています

テレワーク(在宅勤務)を行う社員が在宅で副業を行う場合に労務管理で気を付けるべきこと

ある会社からの相談です。

当社でテレワーク(在宅勤務)を行う社員から、副業希望の申し出がありました。

往復2時間程度の通勤時間が無くなったので、余った時間で在宅ワークでできる副業をしたいです。

当社の就業規則では副業を原則認めることにしていますが、これは平成30年1月改定の厚生労働省モデル就業規則に副業・兼業が追加された頃に、当社にも導入した制度です。コロナ禍により在宅勤務が進み、まさか在宅勤務中の社員が在宅ワークの副業をする場合があるとは想定していませんでした。

当社のテレワーク(在宅勤務)時間中に副業の在宅ワークをするかもしれない」ことを理由に副業を許可しないことは可能でしょうか?

この記事では、このような疑問について回答します。

テレワーク(在宅勤務)を行う社員が在宅で副業を行う場合に労務管理で気を付けるべきこと

会社の労働時間以外の時間を社員がどう使おうと基本的には自由です

会社の就業規則は次のモデル規則であることを前提条件とします。

厚生労働省モデル就業規則(令和3年4月)より

第68条(副業・兼業)

労働者は、勤務時間外において、他の会社等の業務に従事することができる。

2 会社は、労働者からの前項の業務に従事する旨の届出に基づき、当該労働者が当該業務に従事することにより次の各号のいずれかに該当する場合には、これを禁止又は制限することができる。

  1. 労務提供上の支障がある場合
  2. 企業秘密が漏洩する場合
  3. 会社の名誉や信用を損なう行為や、信頼関係を破壊する行為がある場合
  4. 競業により、企業の利益を害する場合

第1項~第4項に該当する場合は、副業・兼業の制限が許されるということです。これら4つの制限事項に該当するかどうかについては、会社が判断します。

判断の目安として「副業・兼業の促進に関するガイドライン わかりやすい解説(令和2年11月 厚生労働省)」に示されています。

労務提供上の支障がある場合(第1項)

  • 副業・兼業が原因で自社の業務が十分に行えない
  • 長時間労働など労働者の健康に影響が生じるおそれがある
  • 労働時間に関する法令等(※)に基づく使用者の義務が果たせないおそれがある

(※)労働時間に関する法令等

  • 労働基準法第36条第6号第2号及び第3号に基づく時間外労働の上限規制
  • 自動車運転者の労働時間等の改善のための基準(平成元年労働省告示第7号)

企業秘密が漏洩する場合(第2項)

  • 営業上・産業上有用な情報が漏洩する
  • 人事、労務管理上の秘密が漏洩する
  • 企業の不祥事に関する秘密が漏洩する

会社の名誉や信用を損なう行為や、信頼関係を破壊する行為がある場合(第3項)

  • 犯罪行為・不正行為がある
  • 就業規則・業務命令に違反する行為がある
  • 誠実労務提供義務、職務専念義務に違反する行為がある

当社のテレワーク(在宅勤務)時間中に副業の在宅ワークをするかもしれない」はこの誠実労働義務、職務専念義務に違反する可能性がありそうです。

しかし、実際に誠実労働義務や職務専念義務に違反する行為が認められないにもかかわらず、可能性だけでは副業の拒否は難しいでしょう。会社にもテレワーク(在宅勤務)時間中に副業の在宅ワークをすることができないように対策をする必要があります。

具体的な対策については後で解説します。

競業により、企業の利益を害する場合(第4項)

  • 労働者は、使用者(会社)の正当な利益を不当に侵害してはならない
  • 労働者は一般的に在職中に使用者と競合する業務を行わない義務を負っている(競業避止義務

副業を認める場合の労務管理上の注意点

副業を開始した時点では上記の4つの場合に該当していなかったとしても、途中から状況が変わることがあり得ます。そこで、継続して「副業を認めない4つの制限事項」に「該当しない・させない」労務管理が必要になります。

個別の書面作成

副業・兼業に関する合意書

厚生労働省の副業・兼業に関する合意書様式例には次の事項が記載されています。

合意書様式例には示されていませんが、今回ご質問の懸念事項「当社のテレワーク(在宅勤務)時間中に副業の在宅ワークをするかもしれない」に対する予防として、ストレートに「私は会社の勤務時間中に一切の副業をしないことを約束します。」の誓約を追加した方がよいと考えます。

  1. 副業・兼業の内容(雇用/自営・事業所・事業内容・契約日・所定労働時間など)
  2. 会社が副業・兼業を認める条件は
    ①「副業を認めない4つの制限事項」に該当しないこと
    ②厚生労働省「副業・兼業の促進に関するガイドライン」に示された「簡便な労働時間管理の方法(管理モデル)」により労働時間管理を行うこと
  3. 副業・兼業が「副業を認めない4つの制限事項」に該当するおそれがある場合、労働者は会社に報告義務があること
  4. 必要に応じて労働者は会社に副業先での実労働時間などの報告義務があること
  5. 労働者は上記1~5の内容に変更があった場合に速やかに会社に届け出る義務があること
    また会社から求めがあった場合にも会社に届け出る義務があること
  6. 労働者は健康保持のため自己管理を行う努力義務(自己保健義務)があること
  7. 会社は労働者の心身の不調時に相談を受ける等の措置を実施すること
  8. 合意書に基づく取扱い期間の設定
秘密保持誓約書

経済産業省 各種契約書等の参考例「2.従業員等のプロジェクト参加時」の「プロジェクト」を「副業」に読み替えて、秘密保持の対象を会社の実情に応じて適宜カスタマイズされるとよいと思います。

社内規程

テレワーク(在宅勤務)でオフィスから離れた場所で仕事をする場合であっても、会社の就業規則および諸規程を遵守する義務があることを改めて労使で確認しましょう。

就業規則

厚生労働省モデル就業規則(令和3年4月)より

第10条(服務)

労働者は、職務上の責任を自覚し、誠実に職務を遂行するとともに、会社の指示命令に従い、職務能率の向上及び職場秩序の維持に努めなければならない。

テレワーク就業規則(在宅勤務規程)

テレワークモデル就業規則~作成の手引き~厚生労働省(page24-26)より

第4条(在宅勤務時の服務規律)

在宅勤務に従事する者(以下「在宅勤務者」という。)は就業規則第〇条及びセキュリティガイドラインに定めるもののほか、次に定める事項を遵守しなければならない。

  1. (略)
  2. 在宅勤務中は業務に専念すること
  3. (以下略)
その他の社内規程
  • 企業秘密保持規程
  • 個人情報取扱規程
  • 特定個人情報取扱規程
  • 情報セキュリティポリシー

などの整備状況を確認しましょう。

もしテレワーク(在宅勤務)中の副業が発覚した場合

会社が取り得る対策として、次のアドバイスをします。

テレワーク(在宅勤務)を取り消し出社勤務を命じる

テレワーク就業規則を根拠に、テレワーク(在宅勤務)の許可を取り消し、オフィス出勤を命じます。

厚生労働省モデル就業規則(令和3年4月)より

第3条(在宅勤務の対象者)

3 会社は、業務上その他の事由により、前項による在宅勤務の許可を取り消すことがある。

副業の禁止・制限をする

「副業を認めない4つの制限事項」に該当した事実があります。「副業・兼業に関する合意書」の合意内容にも違反しますので、当然に会社は違反した労働者に対して副業の禁止・制限をすることができると考えます。

注意指導・懲戒処分をする

出社命令、副業禁止は違反行為をこれ以上重ねないための措置ですが、違反行為をした事実に対しての措置としては、違反行為の悪質度合によって就業規則上の懲戒処分を検討します。

  • 懲戒処分には至らないが注意指導する
  • 違反行為が悪質なので懲戒処分する
どの程度の懲戒処分をするか?

目安としては、人事院の「懲戒処分の指針について」が参考になると思います。

【標準例】(4)勤務態度不良 勤務時間中に職場を離脱して職務を怠り、公務の運営に支障を生じさせた職員は減給又は戒告とする。

ただし具体的な処分の重さについては、標準例よりも重い/軽い処分にする場合があります。

≫ 詳しくは人事院「懲戒処分の指針について」

ICTツールの活用

テレワーク(在宅勤務)の社員が在宅ワークでの副業を認めてもらうためには、「○○さんなら自律的に働くことができるので安心である」と会社からも周囲の社員からも認めてられていることが大事だと思います。

ただし、先にも述べましたように、「○○さんはテレワーク(在宅勤務)で自律的ではなく自由なので副業を認めると不安である」と「不安が実現する可能性」だけで副業を拒否することは難しいです。

どうしても心配な場合はICTツールの活用も考えてみてはいかがでしょうか?

では、①本当に仕事しているの?②情報漏れるんじゃないの?これら2つの本質に向き合ったテレワークシステムです。特長は次の3つです。

  1. 在宅勤務を運用に頼らない仕組み(物理的に制御)
  2. 在宅でのパソコン作業が動画で見える
  3. 作業内容がわかりやすくグラフでも表示
<ご注意>「東京都」「神奈川県」「埼玉県」「千葉県」「栃木県」「茨城県」「群馬県」の企業様が対象です。

むすび

この記事では、「テレワーク(在宅勤務)を行う社員が在宅で副業を行う場合に労務管理で気を付けるべきこと」について解説しました。

原則として次の4つの制限事項に該当しなければ副業を禁止することは難しいです。

  1. 労務提供上の支障がある場合
  2. 企業秘密が漏洩する場合
  3. 会社の名誉や信用を損なう行為や、信頼関係を破壊する行為がある場合
  4. 競業により、企業の利益を害する場合

会社の就業時間中(テレワーク・在宅勤務であっても就業時間は就業時間ですので)に副業を行うことが可能な状況であっても、「3 会社の名誉や信用を損なう行為や、信頼関係を破壊する行為がある場合」の可能性だけを理由に副業禁止をすることは難しいです。

しかし、実際に就業時間中に副業をした事実があれば、状況は変わります。

  • テレワーク(在宅勤務)を認めず、出社勤務を命じることができます
  • 副業を禁止・制限することができます
  • 注意指導ができます
  • 違反行為の悪質度合によっては懲戒処分もできます

予防措置としては、次のような対策があると思います。

  • 社内規程・個別書面(合意書・誓約書)の整備
  • 教育・研修
  • テレワーク環境での上司・社員同士とのコミュニケーション
  • ICTツールの活用

個人的には、ICTツールを活用しなくても、労使の信頼関係に基づく運用で在宅勤務と副業が両立できるのが望ましいと思います。

就業規則・在宅勤務規程などのルールづくりについては次にまとめていますので、見て頂きますと嬉しいです。

この記事が参考になりますと幸いです。

タイトルとURLをコピーしました