妊娠中の従業員からテレワーク(在宅勤務)の希望があったとき

テレワークと産業衛生

新型コロナウィルス感染症が蔓延する中、通勤や職場での感染リスクが心配な妊婦さんから会社に「テレワーク(在宅勤務)をしたい」という相談があったときに、会社が行う対応について社労士目線で解説します。

法律では、産前6週間(多胎妊娠の場合は14週間)の女性従業員から請求があったときは、産前休業をさせなければなりません。

一方で産前6週間より前であっても、つわり等の体調不良や、医師等の判断による軽減業務や安静などの措置のため、妊娠前よりも欠勤が増える可能性が高くなります(コロナに関係なく)。

この記事では、妊娠中の労働者から新型コロナウイルス感染症に関連した理由でテレワーク(在宅勤務)の希望があったときの対応を解説します。

妊娠中の労働者からテレワークの希望があったとき

「母性健康管理指導事項連絡カード」を会社に提出してもらう

根拠なく妊娠中の労働者の希望を受け入れると、周囲の他の労働者の不満につながり職場の雰囲気が悪くなる可能性があります。

会社としては「医療上必要だと医師が証明しているので、法律に基づいて行います」と他の労働者に説明できるようにしておきたいです。

次の順番で母性健康管理指導事項連絡カード(母健連絡カード)を会社に提出してもらいます。

  1. 【会社→労働者→医師】妊娠中の労働者が受診する(母子保健法の保健指導・健康診査)。その際、母健連絡カードに記入する医師(主治医)宛てに、「勤務情報を主治医に提供する際の様式例」等の書面で情報提供されると、医師にとって母健連絡カード記入の参考になると思います。
  2. 【医師→労働者】医師or助産師が、「新型コロナウイルス感染症に感染するかもしれない」という心理的なストレスが母体・胎児の健康保持に影響があるので、職場での措置が必要と判断した場合には、母健連絡カードに指導事項を記入する。
  3. 【労働者→会社】母健連絡カードを会社(管理者・人事担当者など)に提出して、措置を申し出る。
  4. 【会社→労働者】会社が母健連絡カードの指導事項に基づいて、必要な措置を講じます。母健連絡カードの3に記載の「上記2の措置が必要な期間」を超えて措置が必要になりそうならば、再度、母健連絡カードを提出して頂くとよいと思います。

テレワークが可能な職務の場合

男女雇用機会均等法における母性健康管理の措置として、テレワーク(在宅勤務)を進めて頂ければと思います。

初めてのテレワーク導入の取組についてはトップページに概要をまとめていますので、参考にして頂ければと思います。

職務内容を軽減すればテレワーク可能な場合

たとえ職務内容が変わってでもテレワーク(在宅勤務)を強く希望されることもあると思います。

労働基準法では、次のように定められています。

妊娠中の女性が軽易業務への転換を請求した場合には、使用者は他の軽易な業務に転換させなければなりません(労働基準法 第65条第3項)。

ただし、軽易な業務が無い場合には、新たに軽易な業務を創設してまで与える必要はありません(昭和61年3月20日 基発151号・婦発69号)。

例えば、外回りの営業から営業内勤に変わりたい、などです。

職務が変わることによって、賃金が変わることもあり得ます。例えば、営業手当は外回りの営業職が対象で、営業内勤には支給されない、という規則になっている場合です。

就業規則や賃金規程に手当の支給基準が明確に定められていれば、支給基準に合わなくなったら外すことは差支えないと考えます。ただし、あとで不利益取扱いと言われないように、丁寧に説明して書面で同意を取っておくほうがよいでしょう。

テレワークができる業務が無い場合

テレワーク(在宅勤務)ができない場合の考え方は2つあります。

  • 休業
  • 休暇

休業

母健連絡カードで「休業(自宅療養)」にも〇が付いている場合、在宅勤務ができないのであれば、休業の措置になります。

休業中の賃金は就業規則・賃金規程の定めによります。私はいろんな会社の就業規則・賃金規程を見ていますが、無給の場合が多いです。

休業中の従業員の賃金補償については、健康保険に加入している人には「傷病手当金」があります。

健康保険に加入していない人には賃金補償がないのですが、雇用調整助成金が使える会社の場合は、会社が労働者に休業期間中の休業手当を支払うことで、会社が雇用調整助成金を受け取るという方法もありますが、必ずしも雇用調整助成金の対象になるとは限りませんので十分に調べてから行われるとよいと思います。

休暇

  • 年次有給休暇
  • 年次有給休暇以外の休暇

本人から年次有給休暇の申請があれば、年次有給休暇を取得して頂くことで特に差し支え無いと思います。

「年次有給休暇以外の休暇」については、新しい助成金がありますので紹介します。これらの助成金を活用しつつ、有給休暇扱いにするという方法もあります。

新型コロナウイルス感染症に関する母性健康管理措置による休暇制度導入助成金(1事業場につき1回限り15万円)

主な要件は次のとおりです。

  • 新型コロナウイルス感染症に関する母性健康管理措置として休業が必要になってしまった妊娠中の労働者に対して、年次有給休暇とは別の有給休暇制度を設けること
  • 有給休暇の賃金は年次有給休暇の賃金の6割以上にすること
  • 有給休暇制度は就業規則に定めなくても構いませんが、全ての労働者への周知が必要です(制度周知の資料が必要です)
  • 新型コロナウイルス感染症に関する母性健康管理措置の内容も併せて周知が必要です
  • 令和3年4月1日~令和4年1月31日までに間に、この有給休暇を合計5日以上(延日数)取得させること
  • 休暇5日達成した翌日から申請可能
  • 申請期限は令和4年2月28日まで
  • 「両立支援等助成金(新型コロナウイルス感染症に関する母性健康管理措置による休暇取得支援コース)」と併給可能
両立支援等助成金(新型コロナウイルス感染症に関する母性健康管理措置による休暇取得支援コース)(対象労働者1人あたり28.5万円:1事業所あたり上限5人まで)

主な要件は次のとおりです。

  • 新型コロナウイルス感染症に関する母性健康管理措置として休業が必要になってしまった妊娠中の労働者に対して、年次有給休暇とは別の有給休暇制度を設けること
  • 有給休暇の賃金は年次有給休暇の賃金の6割以上にすること
  • 有給休暇制度は就業規則に定めなくても構いませんが、全ての労働者への周知が必要です(制度周知の資料が必要です)
  • 新型コロナウイルス感染症に関する母性健康管理措置の内容も併せて周知が必要です
  • 令和3年4月1日~令和4年1月31日までに間に、この有給休暇を当該労働者について合計20日以上(延日数)取得させること
  • 休暇20日達成した翌日から申請可能。まとめなくても1人ずつ申請可能。上限は5人。
  • 申請期限は令和4年2月28日まで

まとめ

今回、妊娠中の労働者から新型コロナウイルス感染症を心配してテレワークの希望があった場合、会社としてどのように対応したらよいかを解説しました。

  1. 基本的には「母性健康管理指導事項連絡カード」に沿って対応する
  2. テレワークが可能な職務であれば、テレワークを導入する
  3. 職務内容の変更(軽減)によりテレワークが可能になれば、テレワークを導入する。賃金変更については就業規則・賃金規程の定めによります。
  4. テレワークできる業務が無い場合は、休業または休暇になります。賃金は就業規則・賃金規程の定めによります。傷病手当金や助成金の活用を検討しましょう。

以上で解説を終わります。何かのお役になれば幸いです!

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