ひとり法人の本店所在地は、自宅にしても法律上の問題はありません。ただし、本店所在地は登記されて誰でも見られる情報になるため、自宅住所を出したくない人はバーチャルオフィスを選ぶことが多くなっています。どちらがよいかは、住所の公開をどこまで気にするか、事業の内容、住まいの契約によって変わります。
本店所在地は誰でも見られる
会社の本店所在地は、法務局で登記されます。登記事項証明書は手数料を払えば誰でも取れるので、本店所在地は事実上の公開情報です。また、国税庁の「法人番号公表サイト」でも、会社名と本店所在地が公開されます。
自宅を本店にすると、自宅の住所がこうした場所に載ることになります。ネット上で名前を出して仕事をしている人は、特に気をつけたいところです。
代表者の住所も登記される
見落としやすいのが、代表者の住所です。本店所在地とは別に、代表者の自宅住所も登記されます。
株式会社では、2024年10月から「代表取締役等住所非表示措置」が始まりました。登記の申請と一緒に申し出れば、代表取締役の住所を市区町村までの表示にとどめられます。
一方、合同会社はこの措置の対象外です。合同会社の代表社員の住所は、そのまま登記に載ります。つまり、合同会社の場合は本店をバーチャルオフィスにしても、代表社員の自宅住所は登記事項証明書で見られる状態になります。
| 株式会社 | 合同会社 | |
|---|---|---|
| 本店所在地 | 登記される | 登記される |
| 代表者の住所 | 登記される(申し出れば市区町村までの表示にできる) | 登記される(非表示にはできない) |
「自宅住所を知られたくない」という理由で本店所在地を考えるなら、会社の形とあわせて検討してください。合同会社と株式会社の違いは「ひとり法人は合同会社と株式会社どちらがいい?」でまとめています。
自宅を本店にするときの確認ポイント
住まいの契約で認められているか
賃貸住宅の場合、契約で事業での使用が禁止されていることがあります。登記をしただけで来客がなくても、契約違反を問われるおそれがあるので、事前に契約書を確認し、必要なら大家さんや管理会社に相談してください。分譲マンションも、管理規約で事務所としての使用を制限している場合があります。
郵便物や来客をどうするか
会社あての郵便物は、本店所在地に届きます。税務署や年金事務所からの書類も同じです。自宅なら受け取りに困ることはありませんが、取引先が訪ねてくる可能性がある事業では、生活空間との線引きも考えておきたいところです。
バーチャルオフィスを本店にするときの確認ポイント
バーチャルオフィスは、住所の貸し出しと郵便物の受け取り・転送をしてくれるサービスです。月額数千円程度のプランも多く、自宅住所を会社の所在地として出さずに済みます。
その一方で、確認しておきたい点もあります。
- 法人口座の審査:バーチャルオフィスだと審査が慎重になる金融機関もあります。事業の実態がわかる資料を用意しておくと安心です。
- 許認可:人材派遣業や宅地建物取引業など、事務所の実態が求められる業種では、バーチャルオフィスでは許可が取れない場合があります。
- 本人確認:バーチャルオフィスの契約時には、法律にもとづく本人確認があります。会社設立前に契約する場合の手続きも、事前に確認してください。
- 郵便物の転送頻度:転送が週1回や月1回のプランだと、役所からの書類に気づくのが遅れることがあります。年末年始は休業で転送が止まるサービスもあります。
私が合同会社の法人口座を開いたときは、バーチャルオフィスの住所でも審査に通りました。そのときの流れは「【体験談】GMOあおぞらネット銀行 合同会社での法人口座開設」で紹介しています。
私は、株式会社のときも合同会社のときも、本店所在地をバーチャルオフィスにしています。理由は、自宅の住所を出したくなかったからです。
代表者の住所が登記に載ることは、10数年前に株式会社をつくったときから変わりません。合同会社でも同じ扱いだと考えたうえで、本店所在地はバーチャルオフィスにしました。
本店所在地は、法人番号公表サイトや名刺、ウェブサイト、請求書など、登記簿よりも多くの人の目に触れる住所です。その住所が自宅でないだけでも、安心感はかなり違います。
なお、10年以上使ってきて、郵便物の転送で困ったことはほとんどありません。唯一困ったのが年賀状です。バーチャルオフィスはお正月休みに入るため、年末年始に届いた郵便物の転送が遅れます。年賀状をくれそうな相手には年末までに出すようにしていましたが、どうしても返事が必要なものがあり、かなり遅れてしまって失礼だったのではと気になっていました。今は年賀状じまいをしたので、この心配はなくなりました。
法人口座の審査については、私の場合、バーチャルオフィスであることの影響はまったく感じませんでした。
あとから変えると費用がかかる
本店所在地は、あとから変えることもできます。ただし、本店移転の登記が必要で、登録免許税は1か所につき3万円です。別の法務局の管轄地域へ移る場合は、移転前と移転後の両方の登記が必要になるため、合計6万円かかります。
さらに、税務署・都道府県・市区町村・年金事務所への届出や、法人口座・各種サービスの住所変更も必要です。引っ越しの予定があるなら、最初からバーチャルオフィスにしておくほうが手間を減らせるケースもあります。
どちらを選ぶかの目安
- 自宅住所が公開されても気にならない、持ち家で事業利用に制限がない → 自宅
- 自宅住所をできるだけ出したくない、賃貸で事業利用が難しい → バーチャルオフィス
- 引っ越しの予定がある → バーチャルオフィスも検討
- 許認可が必要な業種 → 事務所の要件を先に確認
バーチャルオフィスを比べるときは「全国展開のバーチャルオフィス4選!利用料・サービスの比較」や「バーチャルオフィス1が向いているのはこんな人」も参考にしてください。
まとめ
- 本店所在地は登記され、誰でも見られる情報になる
- 代表者の住所も登記され、非表示にできるのは株式会社だけ
- 自宅を本店にするなら、賃貸契約や管理規約を先に確認する
- バーチャルオフィスは、法人口座の審査や許認可に注意する
- 本店移転には登録免許税3万円(管轄外なら6万円)と各種届出がかかる
本店所在地は、設立後に何年も使う住所です。今の住まいと、数年先の暮らし方の両方を考えて決めてください。




