個人事業主として国民健康保険(国保)と国民年金に入っていた人が、自分の会社をつくって役員報酬を受け取るようになると、会社の健康保険と厚生年金に加入することになります。
会社として出す届出(新規適用届や資格取得届)については、別の記事でまとめました。この記事では、加入する本人と家族の側から見て「何が変わるのか」「自分で届け出るものは何か」を整理します。
私自身は、国保に加入したことはありません。1社目の会社をたたんだあとは健康保険の任意継続被保険者になり、その後、2社目の会社の健康保険に入りました。この記事の国保の手続きは、制度の説明としてまとめています。
年金については、2社目の会社を設立したときに、もともとは設立した月は役員報酬をゼロにして、翌月から会社の社会保険に入る予定でした。ところが法人口座が思ったより早く開設できたので、国民年金に1か月だけ入るよりも、切れ目なく厚生年金に入ったほうがよいと考え、設立した月から役員報酬を支払うことにしました。
任意継続から会社の健康保険に移るときは、国保とは別の注意点があります。私が実際に困ったことは、こちらの記事にまとめています。
【要注意】会社設立で健康保険料が二重払いに!任意継続と同月得喪の落とし穴
二刀流になると、加入する制度はこう変わる
会社の社会保険に入ると、健康保険と年金はそれぞれ次のように変わります。
| 個人事業主のみのとき | 会社の社会保険に入ったあと | |
|---|---|---|
| 健康保険 | 国民健康保険 | 会社の健康保険(協会けんぽなど) |
| 年金 | 国民年金(第1号被保険者) | 国民年金+厚生年金(第2号被保険者) |
| 保険料の納め方 | 自分で納付書・口座振替などで納める | 役員報酬から差し引き、会社が納める |
ここで気をつけたいのは、個人事業を続けていても、国保には入っていられないという点です。会社の健康保険に入っている人は、国保の対象から外れます。「個人事業の分は国保、会社の分は会社の健康保険」と、2つに入るわけではありません。
年金も同じで、国民年金の第1号被保険者から第2号被保険者に変わります。第2号被保険者は、厚生年金に入ることで国民年金にも加入している扱いになります。
自分で届け出るもの:国保をやめる届出
切り替えのときに、本人が忘れやすいのが国保をやめる届出です。
国民健康保険法施行規則では、会社の健康保険などに入って国保の資格を失ったときは、世帯主が14日以内に、住所のある市区町村へ届け出ることになっています。会社の健康保険に入っても、国保の資格が自動で消えるわけではありません。届け出るまでは、国保の保険料(市区町村によっては「保険税」)の請求が続きます。
届出のポイントは次のとおりです。
- 届け出るのは「世帯主」です。自分が世帯主でない場合は、世帯主の名前で届け出ます。
- 会社の健康保険に入ったことがわかるもの(資格確認書や資格情報のお知らせなど)と、本人確認書類を用意します。必要なものは市区町村によって違うので、事前に確認しておくと安心です。
- 国保の保険料は、やめた月以降の分が計算し直されます。納めすぎていれば返ってきます。具体的な金額や時期は、市区町村からの通知で確認します。
国保をやめたあとに国保の資格で病院にかかると、国保が負担した医療費を返すことになります。会社の健康保険に入ったら、届出も早めに済ませておきましょう。
届け出なくてよいもの:国民年金の切り替え
国民年金のほうは、本人が市区町村で手続きをする必要は基本的にありません。日本年金機構の説明では、第2号被保険者の届出は勤め先を通じて事業主が行うものとされています。会社が厚生年金の資格取得届を出せば、国民年金も第1号から第2号に切り替わります。
ただし、次のような場合は注意が必要です。
- 国民年金保険料を口座振替やクレジットカードで納めていると、切り替えの手続きが反映されるまで引き落としが続くことがあります。
- 前納(まとめ払い)をしていると、厚生年金と期間が重なった分は納めすぎになります。重なった分は還付の手続きで返ってきます。
- 付加年金や国民年金基金は、第1号被保険者のための制度です。加入していた人は、第2号被保険者になると扱いが変わります。くわしくはシリーズの後半で取り上げます。
家族がいる場合:扶養の手続きは「自分の会社」で
配偶者や子どもが、これまで一緒に国保に入っていた場合は、家族の健康保険と年金も考える必要があります。
一定の条件を満たす家族は、会社の健康保険の「被扶養者」になれます。また、条件を満たす配偶者は、国民年金の「第3号被保険者」になります。第3号被保険者は、自分で保険料を納める必要がありません。
これらの届出は、勤め先(事業主)を通じて出します。ひとり法人の場合、その事業主は自分自身です。つまり、家族を扶養に入れる届出も、自分の会社の手続きとして自分で作成して提出することになります。
被扶養者になれる条件は、別の記事でくわしく取り上げる予定です。
なお、家族を扶養に入れた場合も、その家族の国保をやめる届出は必要です。家族を扶養に入れない場合は、家族は国保に残り、世帯主が国保の手続きや保険料の納付を続けます。
切り替えのときに気をつけたいこと
切り替えの時期は、役員報酬をいつから支払うかとも関係します。会社の社会保険にいつから入るか、役員報酬をいつから出すかは、設立の段階で一緒に考えておくと、あとで慌てずに済みます。
私は切れ目なく厚生年金に入ることを優先しましたが、どちらがよいかは、設立の時期や資金の状況によって変わります。
まとめ:切り替えのときのチェックリスト
- 会社の健康保険・厚生年金の資格取得届を出した(会社として)
- 国保をやめる届出を、世帯主が14日以内に市区町村へ出した
- 国民年金の口座振替・クレジットカード払い・前納の状況を確認した
- 家族を扶養に入れる場合は、会社として被扶養者の届出を出した
- 扶養に入れた家族の国保をやめる届出も出した
- 国保の保険料の精算の通知を確認した
二刀流になると、「会社として出す届出」と「個人として出す届出」が混ざります。どちらの立場で出すものかを分けて考えると、抜け漏れが少なくなります。



