社会保険に加入している会社には、年金事務所から「事業所調査」の案内が届くことがあります。従業員がいない、役員だけのひとり法人も例外ではありません。
調査と聞くと身構えてしまいますが、目的は、社会保険の届出が正しく行われているかを確認することです。日ごろの届出と書類の整理ができていれば、あわてる必要はありません。
この記事では、事業所調査のしくみと、ひとり法人で準備しておきたい書類を整理します。
事業所調査とは
日本年金機構は、社会保険の加入漏れを防ぎ、届出を正しく行ってもらうために、適用事業所(社会保険に加入している事業所)に対して事業所調査を行っています。将来、年金を受け取れない人や年金が少ない人が出ないようにすることと、事業主の負担を公平にすることが目的です。
調査では、被保険者の資格や報酬について、正しく届出がされているかを確認します。
調査の方法
日本年金機構の説明では、事業所調査は、事業所の状況に応じて次の方法で行われます。
| 調査の方法 | 主な対象 |
|---|---|
| 訪問調査 | 短時間労働者を多く使用している事業所、算定基礎届や賞与支払届が未提出の事業所、これまでの調査で指摘の多い事業所など |
| 呼出・郵送調査 | 上記以外の事業所など |
年金事務所から、調査資料をデータで出すよう求められることもあります。調査資料は、e-Gov(電子政府の総合窓口)の電子申請で提出することもできます。
調査を受ける義務がある
事業所調査は、厚生年金保険法第100条にもとづいて行われます。年金事務所は、必要があるときは、事業主に書類の提出を求めたり、職員が事業所に立ち入って質問したり、帳簿や書類を検査したりできます。
正当な理由なく書類を出さなかったり、質問に答えなかったり、うその説明をしたり、検査を拒んだりすると、同法第102条により、6か月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金の対象になります。案内が届いたら、無視せずに対応しましょう。
調査で確認されること
調査では、主に次のような点が確認されます。
- 加入すべき人が、社会保険に加入しているか
- 資格を取得した日や喪失した日が正しいか
- 報酬月額の届出(資格取得届・算定基礎届・月額変更届)が正しいか
- 賞与支払届が出されているか
- 被扶養者の認定が正しいか
届出の漏れや誤りが見つかった場合は、指摘を受け、正しい届出を出し直すことになります。指摘を受けても届出をしない場合は、確認した事実にもとづいて、さかのぼって手続きが行われることもあります。
ひとり法人で確認されやすいポイント
役員だけのひとり法人では、次の点を意識しておくとよいでしょう。
毎年の届出を出しているか
算定基礎届や賞与支払届が未提出の事業所は、訪問調査の対象になりやすいとされています。役員報酬が毎月同じでも、算定基礎届は毎年出す必要があります。
役員報酬と標準報酬月額が合っているか
役員報酬を変えたのに月額変更届を出していない、といった漏れがないかを確認します。
月額変更届が必要になるのはどんなとき?役員報酬を変えたときの社会保険
家族を扶養に入れている場合
家族を被扶養者にしている場合は、その家族の収入が基準を超えていないかも確認されることがあります。
二刀流の家族の扶養|健康保険の被扶養者と国民年金第3号の条件
会社で人を雇っている場合
ひとり法人でも、会社でアルバイトなどを雇っている場合は、その人が社会保険の加入要件を満たしていないかが確認されます。
日ごろから整えておきたい書類
調査で求められる書類は、年金事務所から届く案内に書かれています。案内に従って準備するのが基本ですが、ひとり法人では、次のような書類を日ごろから整理しておくと、あわてずに済みます。
- 役員報酬の額を決めた記録(株主総会・社員総会の議事録など)
- 賃金台帳(役員報酬・賞与の支払額に加えて、出勤日数と労働時間も書いておく)
- 源泉所得税の納付の記録(所得税源泉徴収高計算書・領収証書の控え)
- 社会保険の届出の控え(資格取得届、算定基礎届、月額変更届、賞与支払届など)
- 標準報酬決定通知書などの通知書
- 被扶養者がいる場合は、その収入がわかる書類
e-Govで電子申請をしている場合は、届出の控えや通知書もe-Gov上で確認できます。
私も1社目の会社で、事業所調査を何度か受けました。いずれも呼出か郵送の調査でした。
郵送の調査のときは、適用に関する調査票を記入して、直近の源泉所得税の領収証書のコピーを添えて送りました。
呼出の調査のときは、案内に次の書類が挙げられていました。
- 報酬・雇用に関する調査票
- 就業規則(労働協約)と給与規則
- 所得税源泉徴収高計算書(領収書)
- 賃金台帳(給与振込明細書)
- 出勤簿またはタイムカード(賃金台帳で出勤日数と労働時間が確認できる場合は省略可)
このうち、所得税源泉徴収高計算書・賃金台帳・出勤簿などは、過去2年分を求められました。
ただし、役員だけの法人には労働者がいないので、就業規則や給与規則、出勤簿やタイムカードは必要ありません。賃金台帳に出勤日数と労働時間を書いておけば、それで確認してもらえます。
まとめ
- 事業所調査は、社会保険の届出が正しく行われているかを確認するための調査で、ひとり法人も対象になる
- 調査には、訪問調査と呼出・郵送調査がある
- 算定基礎届や賞与支払届の未提出は、訪問調査の対象になりやすい
- 調査を拒んだりうその説明をしたりすると、罰則の対象になる
- 届出の漏れや誤りが見つかると、正しい届出を出し直すことになる
- 役員報酬を決めた記録、支払いの記録、届出の控えなどを日ごろから整理しておく



