個人事業主のときは国民年金の第1号被保険者でしたが、自分の会社で厚生年金に入ると、第2号被保険者に変わります。保険料の納め方が変わるだけでなく、将来受け取る年金のしくみも変わります。
この記事では、金額の試算ではなく、「何がどう変わるのか」というしくみを整理します。会社の社会保険に切り替えるときの手続きは、こちらの記事でまとめました。
個人事業主が法人の社会保険に入ると何が変わる?国保・国民年金からの切り替え
年金は「2階建て」になる
日本の公的年金は、すべての人が入る国民年金(1階)と、会社員や役員が入る厚生年金(2階)の2階建てです。
| 個人事業主のみのとき | 会社で厚生年金に入ったあと | |
|---|---|---|
| 加入する制度 | 国民年金(第1号被保険者) | 国民年金+厚生年金(第2号被保険者) |
| 老後に受け取る年金 | 老齢基礎年金 | 老齢基礎年金+老齢厚生年金 |
厚生年金に入っている間は、国民年金にも第2号被保険者として加入している扱いになります。そのため、厚生年金の加入期間は、1階部分の老齢基礎年金の計算にも、2階部分の老齢厚生年金の計算にも使われます。
1階部分:老齢基礎年金
老齢基礎年金は、保険料を納めた期間などが合わせて10年以上ある場合に、原則として65歳から受け取れます。
第1号被保険者として国民年金保険料を納めた期間と、第2号被保険者として厚生年金に入っていた期間(20歳以上60歳未満の期間)は、どちらも老齢基礎年金の計算に入ります。個人事業主の期間と会社の役員の期間は、1階部分ではつながって数えられます。
2階部分:老齢厚生年金
受け取れる人と時期
日本年金機構の説明では、老齢厚生年金は、老齢基礎年金を受け取れる人に厚生年金の加入期間がある場合に、老齢基礎年金に上乗せして、原則として65歳から受け取れます。
金額は「報酬」と「期間」で決まる
老齢厚生年金の中心になるのは「報酬比例部分」です。名前のとおり、厚生年金に入っていた間の報酬(標準報酬月額と標準賞与額)と、加入していた月数をもとに計算されます。
つまり、ひとり法人の場合は、役員報酬の額と、厚生年金に入っていた期間の長さが、将来の老齢厚生年金に反映されます。標準報酬月額が低いと保険料も低くなりますが、そのぶん将来の老齢厚生年金も少なくなります。保険料と将来の年金は、セットで考える必要があります。
標準報酬月額のしくみは、こちらの記事でまとめています。
加給年金
厚生年金の加入期間が20年以上ある人が65歳になったとき、生計を維持している一定の配偶者や子がいると、「加給年金」が加算されます。加算を受けるには届出が必要です。
個人事業主として国民年金だけに入っていた期間は、この20年に含まれません。厚生年金に入った年齢によっては、20年に届くかどうかも確認しておくとよいでしょう。
60歳以降も役員を続ける場合
60歳を過ぎても厚生年金に入り続ける
国民年金の第1号被保険者は、原則として60歳までです。一方、厚生年金は、会社で働いている(役員である)限り、70歳になるまで加入します。
60歳以降の厚生年金の加入期間は、老齢基礎年金(1階)の額には原則として反映されませんが、老齢厚生年金(2階)の報酬比例部分には反映されます。あわせて、「経過的加算」という調整のしくみもあります。
年金を受け取りながら役員を続けると
厚生年金に入りながら老齢厚生年金を受け取る場合、役員報酬と年金の合計額によっては、年金の一部または全部が支給停止になることがあります。これを「在職老齢年金」といいます。
在職老齢年金の注意点は、こちらの記事でくわしく書いています。
定年後のマイクロ法人活用〜在職老齢年金の1ヶ月ルールに要注意
障害や死亡のときの年金も変わる
厚生年金に入ると、老後の年金だけでなく、病気やけがで障害が残ったときや、亡くなったときの年金も変わります。
- 障害:国民年金の障害基礎年金に加えて、厚生年金の障害厚生年金の対象になります。
- 死亡:残された家族は、国民年金の遺族基礎年金に加えて、厚生年金の遺族厚生年金の対象になります。
どちらも、受け取れるかどうかや金額は、加入期間や家族の状況などによって決まります。くわしい条件は、日本年金機構のページで確認してください。
国民年金だけの制度は使えなくなる
付加年金や国民年金基金のように、国民年金の第1号被保険者だけが使える制度は、厚生年金に入ると使えなくなります。この点は、次の記事で取り上げます。
自分の年金の見込みを確認するには
将来の年金額は、加入期間や報酬、制度改正などによって変わります。自分の見込み額は、毎年届く「ねんきん定期便」や、日本年金機構の「ねんきんネット」で確認できます。ねんきんネットの使い方は、このシリーズの後半で取り上げる予定です。
まとめ
- 厚生年金に入ると、年金は老齢基礎年金(1階)+老齢厚生年金(2階)の2階建てになる
- 個人事業主の期間と役員の期間は、老齢基礎年金ではつながって数えられる
- 老齢厚生年金は、役員報酬(標準報酬月額・標準賞与額)と加入期間で決まる
- 保険料と将来の年金はセットで考える
- 厚生年金は70歳まで加入。60歳以降の期間も老齢厚生年金に反映される
- 年金を受け取りながら役員を続けると、在職老齢年金で年金が止まることがある
- 障害厚生年金・遺族厚生年金の対象にもなる



