ひとり法人をたたむときは、登記や税金の手続きに加えて、社会保険の手続きも必要です。会社として「もう社会保険の適用事業所ではなくなった」ことを届け出て、自分自身の健康保険と年金も、個人事業主としての形に切り替えます。
この記事では、会社をたたむときの社会保険の手続きと、個人事業側の切り替えを整理します。
会社を作ったときの社会保険の手続きは、こちらの記事でまとめています。
会社側の手続き:適用事業所全喪届
どんなときに出すか
日本年金機構の説明では、次のような場合に、事業主が「適用事業所全喪届」を出します。
- 事業を廃止(解散)する場合
- 事業を休止(休業)した場合
- 他の事業所と合併して、事業所が存続しなくなる場合
会社を解散してたたむときだけでなく、会社を残したまま事業を休止する(いわゆる休眠させる)場合も、全喪届の対象になります。
提出期限と提出先
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 提出期限 | 事実発生から5日以内 |
| 提出先 | 事務センターまたは管轄の年金事務所 |
| 提出方法 | 電子申請・郵送・窓口持参 |
添付書類
添付書類は、原則として次のどちらかです。
- 解散登記の記入がある法人登記簿謄本(登記事項証明書)のコピー
- 雇用保険適用事業所廃止届(事業主控)のコピー
役員だけのひとり法人は、雇用保険の適用事業所になっていないことが多いので、通常は解散登記の記入がある登記事項証明書を使うことになります。登記事項証明書は、法務局のオンライン請求でも取り寄せられます。
これらを添付できない場合は、税務署に出した給与支払事務所等の廃止届のコピーや、解散などの異動事項が書かれた法人税・消費税の異動届のコピーなどで代えることができます。
電子申請で出す場合は、添付書類を画像ファイル(PDFまたはJPEG)で添付できます。
全喪の情報は公表される
全喪届に書いた事業所の名称、所在地、全喪年月日は、日本年金機構のホームページに掲示され、誰でも見られる状態になります。適用の適正化のための取り扱いなので、あらかじめ知っておきましょう。
自分自身の資格喪失届もあわせて出す
全喪届とあわせて、被保険者である自分自身の「健康保険・厚生年金保険 被保険者資格喪失届」も出します。提出期限は、資格を失った日から5日以内です。
被扶養者がいる場合は、資格確認書などが交付されていれば返却が必要です。
最後の月の保険料
社会保険料は、原則として資格を失った日が属する月の前月分までかかります。資格を失う日が月末か月初かで、最後に保険料を納める月が変わることがあります。会社の最後の決算や資金の計画に影響するので、たたむ時期を決めるときに確認しておきましょう。
私は1社目の株式会社をたたんだとき、全喪届などの手続きをe-Govの電子申請で行いました。
このとき注意したいのが、「解散日」がいつかです。解散日は、株主総会で解散を決議した日です。法務局に解散の登記を申請した日や、登記の手続きが終わった日ではありません。
全喪届の提出期限は「事実発生から5日以内」なので、登記が終わるのを待っていると期限に間に合わないことがあります。解散を決議する日が決まったら、社会保険の手続きも並行して準備しておくと安心です。
個人事業側の切り替え
会社の社会保険を抜けたあと、個人事業主として続ける場合は、自分で次の切り替えをします。
健康保険
健康保険は、任意継続・国民健康保険・家族の扶養・新しい会社の健康保険の中から選びます。任意継続は退職日の翌日から20日以内、国民健康保険は資格を失ってから14日以内と、期限が短いので注意が必要です。
会社を辞めた・たたんだあとの健康保険はどれを選ぶ?任意継続・国保・家族の扶養
国民年金
厚生年金の資格を失うと、国民年金の第2号被保険者ではなくなります。新しい会社の厚生年金に入らない場合は、住所地の市区町村で、国民年金の第1号被保険者になる手続きをします。
配偶者を第3号被保険者にしていた場合は、配偶者も第1号被保険者への切り替えが必要です。
第1号被保険者に戻ると使える制度
第1号被保険者に戻ると、厚生年金に入っている間は使えなかった付加年金や国民年金基金を、また利用できるようになります。
厚生年金に入ると使えなくなる制度|国民年金基金・付加年金など
iDeCo
iDeCoに加入している場合は、加入区分が第2号から第1号に変わるので、運営管理機関に変更の届書を出します。掛金の上限も変わります。
病気やけがで休んでいるときにたたむ場合
会社の健康保険の被保険者期間が継続して1年以上あり、資格を失う日の前日に傷病手当金や出産手当金を受けている(または受けられる状態にある)場合は、資格を失ったあとも引き続き受け取れます。たたむ時期を決めるときは、この点も確認しておきましょう。
手続きのチェックリスト
会社として
- 適用事業所全喪届(事実発生から5日以内)
- 被保険者資格喪失届(資格を失った日から5日以内)
- 被扶養者の資格確認書などの返却(交付されている場合)
- 最後の月の保険料の確認
個人として
- 健康保険の選択と手続き(任意継続は20日以内、国保は14日以内)
- 国民年金の第1号被保険者への切り替え(配偶者も含めて)
- iDeCoの加入区分の変更
- 付加年金・国民年金基金を利用するかの検討
まとめ
- 会社をたたむ(解散する)とき、休眠させるときは、適用事業所全喪届を事実発生から5日以内に出す
- 添付書類は、原則として解散登記の記入がある登記事項証明書のコピー(ひとり法人の場合)
- 全喪の情報は、日本年金機構のホームページで公表される
- 自分自身の資格喪失届もあわせて出す
- 個人事業主に戻るときは、健康保険・国民年金・iDeCoなどを自分で切り替える





