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賃金・手当の日割り計算方法まとめ

ある会社からの相談です。

病気休職中の社員が復職するにあたり、出社や通勤にかかる心身への負荷を軽減するために、医師の診断書・意見書に基づき、週5日勤務のうち在宅勤務2日と出社勤務3日の配慮措置を一定の期間設けることにしました。

賃金計算期間の途中での復職ですので、月給制の賃金は日割り計算になります。賃金計算については復職前に説明しておきたいです。日割り計算の方法について教えて欲しいです。

この記事では、賃金計算期間の途中で職場復帰したときの賃金(月給)日割り計算について、できるだけ分かりやすく解説します!

また、在宅勤務2日、出社勤務3日の組み合わせで手当の日割り計算が考えられるのは、おそらく在宅勤務手当(月額)、通勤手当(月額)が考えられますので、それぞれの手当の日割り計算についても解説します。

<就業規則の前提条件>
賃金の日割り計算の方法は、会社の就業規則に定めます。この記事では次の前提で解説します。

厚生労働省モデル就業規則での日割り計算方法

日割り計算の方法は法令に定められていませんので、就業規則の定めに従います。

例えば、厚生労働省モデル就業規則(第45条)では次のように定めています。

(欠勤等の扱い)
第45条 欠勤、遅刻、早退及び私用外出については、基本給から当該日数又は時間分の賃金を控除する。
2 前項の場合、控除すべき賃金の1時間あたりの金額の計算は以下のとおりとする。
(1)月給の場合 基本給÷1か月平均所定労働時間数
   (1か月平均所定労働時間数は第40条第3項の算式により計算する。)
(2)日給の場合 基本給÷1日の所定労働時間数

※なお、休職期間中は無給とします(厚生労働省モデル就業規則 第43条第3項参照)。

厚生労働省モデル就業規則(令和5年7月版)

第40条第3項の算式

{(365-年間所定休日 日数)×1日の所定労働時間}÷12

厚生労働省モデル就業規則(令和5年7月版)

上記の厚生労働省モデル就業規則で日割り計算をする場合は、次の流れで計算します。

上記の厚生労働省モデル就業規則で日割り計算をする場合
  • Step 1
    1時間あたりの金額【A】を算出する

    【A】=基本給(月額)【B】÷1か月平均所定労働時間数【C】

  • Step 2
    控除すべき賃金【D】を算出する

    【D】=【A】 × 不就労時間数(欠勤、遅刻、早退、私用外出の時間数)【E】

  • Step 3
    不就労時間を控除(差し引いた)後の賃金【F】を算出する

    【F】=【A】-【D】

欠勤の日割り計算について

欠勤で丸一日休んだ日も上記時間割の額【A】から計算するのですか?

厚生労働省モデル就業規則の定めには明確に示されていませんが、日額は「(欠勤した当日に働くべき)1日所定労働時間数×時間割額【A】」で算出すると解釈できると考えます。

当社は年間通じて1日の所定労働時間が8時間です。この場合、分母を「1か月平均所定労働日数」として日割り計算することは可能ですか?

はい、1日の所定労働時間が同じ場合は、分母を「1か月平均所定労働日数」にして月額からの日割り計算をすることは、結局「1か月平均所定労働時間数÷8時間」と同じですので、問題ないです。

各企業での就業状況に応じて時間割と日割の計算方法を就業規則に定めます。

厚生労働省モデル就業規則では、基本給月額を1か月平均所定労働時間数で割った額を1時間当たりの金額とする方法を採用していますが、各企業においては分母を「当月所定労働時間数」とする計算方法を就業規則に定める場合もあります。どちらでも法令違反ではなく、就業規則に決めたルールに従って日割り計算をする、ということが大切です。(当月所定労働時間数につきましては後述します。)

まずは、以下のカレンダーを想定し、厚生労働省モデル就業規則と同様に「1か月平均所定労働日数」を使う方法で説明します。

当月所定労働日数【a】1か月平均所定労働日数【b】日数の差
【a】-【b】
4月20日20日0
5月19日20日1
6月21日20日1
7月20日20日0
8月19日20日1
9月20日20日0
10月21日20日1
11月20日20日0
12月20日20日0
1月20日20日0
2月19日20日-1
3月21日20日1
合計240日240日0

欠勤の日割り計算の計算例

例えば、上記の表で10月に出勤3日の場合は、厚生労働省モデル就業規則の計算ではどうなりますか?前提として、1日の所定労働時間は一律8時間です。

厚生労働省モデル就業規則では、月給から不就労時間分の賃金を控除(差し引く)します。1日の所定労働時間が一律の場合は、月額賃金を1か月所定労働日数で割っても構いません。

しかし、1か月平均所定労働日数とその月の所定労働日数が異なり、さらに出勤/不就労日数が極端に少ない場合には、実就労日数に応じた金額よりも多く算出される少なく算出されるという不整合が生じることがあります。具体的に計算してみましょう。

<計算例の前提条件>
20xx年10月に病気休職から復帰
  • 1か月平均所定労働日数 20日(年間労働日数 240日)
  • 賃金計算期間 1日~末日
  • 復職日 20xx年10月27日
  • 出勤日数 3日
  • 20xx年10月の所定労働日数 21日
  • 欠勤日数 21日-3日=18日
  • 月給 200,000円
  • 1日あたりの日割り額 200,000円÷20日=10,000円

厚生労働省モデル就業規則では、月給から欠勤日数分の賃金を控除(差し引く)します。

厚生労働省モデル就業規則では、月給から欠勤日数分の賃金を控除(差し引く)しますので、20xx年10月に出勤3日(欠勤18日)した場合の賃金は次のようになります。

月給から欠勤日数分の日割り額を引いた場合

[月給] 200,000円 - [欠勤控除](10,000円×18日)= 20,000円

しかし、実際に3日出勤しているのですから、【出勤日数×日割り額】にしなければ、労働者に不利益が生じますよね?

はい、おっしゃる通り、10,000円の差額があります。

「就業規則通りの計算方法だからこれで正しい!間違っていない!」という意見と、「日額×出勤日数になっていないのは労働者への不利益だ!」という意見が対立する懸念があります。

出勤日数×日割り額で計算した場合

[日割り額] 10,000円 × [出勤日数] 3日 = 30,000円

また、逆に20xx年10月に出勤20日(つまり欠勤1日)した場合にも、どのように計算すればよいのか困ってしまいます。

こちらも10,000円の差額がありますが、【出勤日数×日割り額】で計算した場合には、1日欠勤しても月給が満額支給になってしまいます。これは労働者にとっては利益になりますが、これで問題ないのでしょうか?

月給から欠勤日数分の日割り額を引いた場合

[月給] 200,000円 - [欠勤控除](10,000円×1日)= 190,000円

出勤日数×日割り額で計算した場合

[日割り額] 10,000円 × [出勤日数] 20日 = 200,000円

改善案

上記の計算例のように、1か月平均所定労働日数とその月の所定労働日数が異なり、さらに出勤/不就労日数が極端に少ない場合には、実就労日数に応じた金額よりも多く算出される/少なく算出されるという不整合が生じることがあります。

このような場合に備えて、次のように定める方法をご提案します。

月額賃金の日割り計算の案
  • 1か月平均所定労働日数で日割り額を算出し、
  • 当月所定労働日数の半分以上の出勤なら欠勤控除
  • 当月所定労働日数の半分未満の出勤なら日割り額×出勤日数にする。

一般的な日割り計算の方法とは?

一般的な日割り計算の方法①(1か月平均所定労働日数を使う方法)

1カ月平均所定労働日数で日割り額を算出して、当月所定労働日数の半分以上出勤なら欠勤控除、当月所定労働日数の半分未満の出勤なら日割り額×出勤日数、って面倒なのですが、どういうメリットがあるのですか?

はい、確かに面倒なのですが、下表に示しますように、先ほどの計算例の20xx年10月について、すべての出勤日数と欠勤日数の組み合わせで日割り計算をしてみました。この方法により、出勤日数あるいは不就労日数が極端に少ない場合のひずみを解消することができます。

当月所定労働日数の半分以上/未満出勤日数欠勤日数欠勤控除による
日割り計算
出勤日数による
日割り計算
半分未満021-10,0000
半分未満120010,000
半分未満21910,00020,000
半分未満31820,00030,000
半分未満41730,00040,000
半分未満51640,00050,000
半分未満61550,00060,000
半分未満71460,00070,000
半分未満81370,00080,000
半分未満91280,00090,000
半分未満101190,000100,000
半分以上1110100,000110,000
半分以上129110,000120,000
半分以上138120,000130,000
半分以上147130,000140,000
半分以上156140,000150,000
半分以上165150,000160,000
半分以上174160,000170,000
半分以上183170,000180,000
半分以上192180,000190,000
半分以上201190,000200,000
半分以上210200,000210,000

一般的な日割り計算の方法②(当月所定労働日数を使う方法)

先ほど、当月所定労働日数を使っている会社もあるとお聞きしましたが、どういう場合に当月所定労働日数で日割り計算をするのでしょうか?

1年変形労働時間制を採用している場合などに多いかと思いますが、月によって当月所定労働日数の変動幅が大きい場合は、1か月平均所定労働日数を使うとむしろ日割り計算が難しくなることがあります。次の表でシミュレーションをしてみましょう。

1か月平均所定労働日数を使う弊害がある例

【1か月平均所定労働日数を使う場合】
<計算例の前提条件>
20xx年xx月に病気休職から復帰
  • 1か月平均所定労働日数 20日(年間労働日数 240日)
  • 当月所定労働日数が17日~23日とバラつきが大きい
  • 賃金計算期間 1日~末日
  • 20xx年xx月の所定労働日数 23日
  • 月給 200,000円
  • 1日あたりの日割り額 200,000円÷20日=10,000円

1か月平均所定労働日数で日割り額を算出して、当月所定労働日数の半分以上出勤なら欠勤控除、当月所定労働日数の半分未満の出勤なら日割り額×出勤日数という方法は、出勤日数あるいは不就労日数が極端に少ない場合のひずみを解消するメリットを先ほど説明しましたが、実は、出勤日数あるいは不就労日数が月の半分くらいになるところでひずみが生じるデメリットがあります。

例えば、1か月平均所定労働日数よりも当月所定労働日数が3日多い月の1か月平均所定労働日数での日割り計算の例を見てみましょう。シミュレーション表の一部を抜粋します。(表の完全版は後に付けています。)

当月所定労働日数の半分以上/未満出勤日数欠勤日数欠勤控除による
日割り計算
出勤日数による
日割り計算
半分未満81550,00080,000
半分未満91460,00090,000
半分未満101370,000100,000
半分未満111280,000110,000
半分以上121190,000120,000
半分以上1310100,000130,000
半分以上149110,000140,000
半分以上158120,000150,000

出勤日数が9日と12日の日割り計算額が90,000円

出勤日数が10日と13日の日割り計算額が100,000円

出勤日数が11日と14日の日割り計算額が110,000円

になるのはおかしいですね?

はい、そうなんです。

当月所定労働日数の変動幅が大きい場合は、1か月平均所定労働日数を用いた日割り計算は適していないと思います。

当月所定労働日数の半分以上/未満出勤日数欠勤日数欠勤控除による
日割り計算
出勤日数による
日割り計算
半分未満023-30,0000
半分未満122-20,00010,000
半分未満221-10,00020,000
半分未満320030,000
半分未満41910,00040,000
半分未満51820,00050,000
半分未満61730,00060,000
半分未満71640,00070,000
半分未満81550,00080,000
半分未満91460,00090,000
半分未満101370,000100,000
半分未満111280,000110,000
半分以上121190,000120,000
半分以上1310100,000130,000
半分以上149110,000140,000
半分以上158120,000150,000
半分以上167130,000160,000
半分以上176140,000170,000
半分以上185150,000180,000
半分以上194160,000190,000
半分以上203170,000200,000
半分以上212180,000210,000
半分以上221190,000220,000
半分以上230200,000230,000

上記の例で、当月所定労働日数を使うと

【当月所定労働日数を使う場合】
<計算例の前提条件>
20xx年xx月に病気休職から復帰
  • 1か月平均所定労働日数 20日(年間労働日数 240日)
  • 当月所定労働日数が17日~23日とバラつきが大きい
  • 賃金計算期間 1日~末日
  • 20xx年xx月の所定労働日数 23日
  • 月給 200,000円
  • 20xx年xx月の1日あたりの日割り額 200,000円÷23日≒8,696円
  • 計算では四捨五入せずに「200,000/23」を用いました
  • 日割り計算額の小数点以下は切り上げしました

当月所定労働日数で日割り額を算出する場合は、欠勤控除による日割り計算額と、出勤日数による日割り計算額は同じ金額になりますので、1か月平均所定労働日数のときに生じたひずみはありません。

例えば、1か月平均所定労働日数よりも当月所定労働日数が3日多い月の当月所定労働日数での日割り計算の例を見てみましょう。シミュレーション表の一部を抜粋します。(表の完全版は後に付けています。)

当月所定労働日数の半分以上/未満出勤日数欠勤日数欠勤控除による
日割り計算
出勤日数による
日割り計算
半分未満81569,56669,566
半分未満91478,26178,261
半分未満101386,95786,957
半分未満111295,65395,653
半分以上1211104,348104,348
半分以上1310113,044113,044
半分以上149121,740121,740
半分以上158130,435130,435

当月所定労働日数が17日~23日とバラつきが大きい会社では、1か月平均所定労働日数ではなく、当月所定労働日数で日割り計算するほうがスッキリしてわかりやすいですね。

はい、そうなんです。

当月所定労働日数の変動幅が大きい場合は、当月所定労働日数を用いた日割り計算の方が適していると思います。

当月所定労働日数の半分以上/未満出勤日数欠勤日数欠勤控除による
日割り計算
出勤日数による
日割り計算
半分未満02300
半分未満1228,6968,696
半分未満22117,39217,392
半分未満32026,08726,087
半分未満41934,78334,783
半分未満51843,47943,479
半分未満61752,17452,174
半分未満71660,87060,870
半分未満81569,56669,566
半分未満91478,26178,261
半分未満101386,95786,957
半分未満111295,65395,653
半分以上1211104,348104,348
半分以上1310113,044113,044
半分以上149121,740121,740
半分以上158130,435130,435
半分以上167139,131139,131
半分以上176147,827147,827
半分以上185156,522156,522
半分以上194165,218165,218
半分以上203173,914173,914
半分以上212182,609182,609
半分以上221191,305191,305
半分以上230200,000200,000

1か月平均所定労働日数を使うか、当月所定労働日数を使うか?

それぞれメリット・デメリットをまとめました。

これから就業規則を整備する会社の場合は、1か月平均と当月所定の日数の乖離が大きい月で欠勤日数別のシミュレーションをして、最適な日割り計算方法を探して頂ければと思います。

日割り計算の分母メリットデメリット
1か月平均所定労働日数日割り額の分母を一定の値に固定することができます。1か月平均所定労働日数と当月所定労働日数の乖離が大きい場合、日割り計算にひずみが生じます。
当月所定労働日数「日割り額×出勤日数」と「月給-(日割り額×不就労日数)」が同じ金額になります。一方で、所定労働日数の多い月/少ない月で日割り額が変わります。

労災保険からの未払賃金の立替払い制度では1か月平均所定労働日数を使用

参考までに、会社が倒産した場合に労災保険からの未払賃金の立替払いという制度があるのですが、就業規則等で具体的に定めが無い場合、その立替払の賃金の日割り計算方法は「1か月平均所定労働日数」で割る方法になっています。(ほとんどの会社では月によって所定労働日数は異なると思われますので。)

※3 日割計算について
月給制(欠勤しても賃金が減額されない完全月給制を含みます。)において、退職日が賃金計算期間の途中の日である場合は、退職日以前の労働に対応する部分につき日割計算した額になります。
<日割計算の方法>
 就業規則等で具体的に定められている方法により計算しますが、定められていない場合には、出勤日数に応じて計算することになります。
 「日割計算した賃金額」=「月給及び月決めの各種手当(役職手当・家族手当・通勤手当等)」×「実労働日数」÷「所定労働日数(月によって所定労働日数が異なる場合は、年間所定労働日数を12月で除した平均所定労働日数)

独立行政法人 労働者健康安全機構ホームページより引用

マニアックな解説

<マニアックな解説>

厚生労働省モデル就業規則(令和5年7月版)でも(月によって所定労働日数が異なる場合は)1か月平均所定労働日数を分母にして日割り計算をします。

この規定をそのまま使う注意点ですが、モデル就業規則第40条第3項では、1年の暦日数を365日に固定しています。

もし1年の暦日数を365日に固定すると、うるう年では実際の労働日数より1日少なくなります。

よって、1か月平均所定労働日数の計算で使用する労働日数は、「365日-休日数」ではなく「1年間の暦日数-休日数」に定義するほうが正確に計算できると思います。

基本給・各種手当の日割り計算

厚生労働省モデル就業規則(令和5年7月版)の第33条(賃金の構成)では、賃金を次の3つに区分しています。

  • 基本給
  • 手当
  • 割増賃金

一方で、手当には割増賃金の算定基礎に「含まれる手当」と「含まれない手当」があります。割増賃金の算定基礎から除外される手当は次の7つに限られます。

  1. 家族手当
  2. 通勤手当
  3. 別居手当
  4. 子女教育手当
  5. 住宅手当
  6. 臨時に支払われた賃金
  7. 1か月を超える期間ごとに支払われる賃金

ただし、上記1~7の名目であっても、渡し切りの手当などにすると基準内賃金にしなければなりません。割増賃金の算定基礎に含むことが「できる/できない」具体的な例が厚生労働省リーフレット「割増賃金の基礎となる賃金とは?」に示されています。

よって、日常的に発生する割増賃金算定の実務では、賃金を構成する項目を次の4つに区分する方が分かりやすいため、就業規則(賃金規程)の「賃金の構成」条項では次の区分にすることをお勧めしています。

  • 基準内賃金(基本給など、割増賃金の算定基礎に含まれる手当)
  • 基準外賃金(残業手当など、割増賃金の算定基礎に含まれない手当)
  • 1か月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与など)

基準内賃金の日割り計算

基準内賃金には基本給や各種手当(割増賃金の算定基礎に含む7種の手当以外の全ての手当)が含まれます。

  • 基本給
  • 役職手当
  • 営業手当
  • 技能手当
  • 資格手当
  • 在宅勤務手当
  • など

今回は、1ケ月平均所定労働日数を用いた方法で日割り計算をします。

1か月平均所定労働日数で日割り額を算出し、当月所定労働日数の半分以上出勤なら欠勤控除、半分未満出勤なら日割り額×出勤日数にする。

(例外)精皆勤手当は一般的には欠勤等があれば手当全額を支給しない要件になっていますので、日割り計算で支給しない場合が多いと思われます(就業規則に定めた精皆勤手当の要件によります)。

手当まで日割り計算するのですか?

手当を日割り計算するのか、1日でも出勤したら満額支払うのか、就業規則の定めによります。例えば、厚生労働省モデル就業規則 第45条(欠勤等の扱い)では基本給のみ日割り計算の対象にしていますので、この規程ではその他の手当は満額支給する、という解釈になるでしょう。

ただし、ほとんどの会社では、賃金計算期間の全労働日を休んだ場合は手当も含めて賃金を支給しないのではないでしょうか?

  • 賃金計算期間の全労働日を休んだ場合は基本給も手当も無給
  • 賃金計算期間のうち1日でも出勤すれば、基本給は日割り分だけだが、手当は満額

賃金に占める手当の金額が大きければ、より矛盾や不公平感が生じるように考えますが、いかがでしょうか?手当の趣旨にもよるという考え方も有りますが、これらの手当も含めて超過した労働時間に対して割増賃金を払うのですから、不足する労働時間に対して減額するのは合理的だと考えます。ただし就業規則に「手当も含めた日割り計算方法」を定める必要があります。

ここでは、役職手当などに固定残業分を含んでいない前提で回答しました。手当に固定残業と別の何か、の複数の趣旨を含むことはお勧めしません。別記事に詳しく解説しています。

また、在宅勤務手当の日割り計算が面倒なので、日額にする場合には割増賃金の計算方法が月額の手当とは異なります。別記事に詳しく解説しています。

基準外賃金の日割り計算

基準外賃金には次の手当が含まれます。

  • 家族手当
  • 通勤手当
  • 別居手当
  • 子女教育手当
  • 住宅手当
  • 時間外手当・休日手当・深夜手当
  • 固定残業手当

日割計算しない手当

  • 時間外手当・休日手当・深夜手当

なぜなら、時間外労働・休日労働・深夜労働の実績に基づいて支給する時間外手当・休日手当・深夜手当とは、もともと一定額の支給が確定していない手当ですので、そもそも日割り計算する必要がないからです。

なぜなら、時間外労働・休日労働・深夜労働の実績に基づいて支給する時間外手当・休日手当・深夜手当とは、もともと一定額の支給が確定していない手当ですので、そもそも日割り計算する必要がないからです。

日割計算するかしないか検討する手当

  • 家族手当
  • 別居手当
  • 子女教育手当
  • 住宅手当

現時点では、日割り計算するのは難しいのではないかと思います。基本給を日割りでも支給する場合は満額支給でしょう。但し、全休で基本給を支払わない場合にはこれらの手当も無給で差し支えありません(ただし、就業規則に定める必要があります)。

基準内賃金である手当の日割り計算について、

手当の趣旨にもよるという考え方も有りますが、これらの手当も含めて超過した労働時間に対して割増賃金を払うのですから、不足する労働時間に対して減額するのは合理的だと考えます。ただし就業規則に「手当も含めた日割り計算方法」を定める必要があります。

と説明しました。上記4つの手当(家族手当・別居手当・子女教育手当・住宅手当)は割増賃金の算定基礎に含まれないので、欠勤等で日割り控除するのはおかしいのではないか?という考え方になると思います。家族形態や生き方が多様化する中で、これら4つの属人的な手当が家族や住宅を持っていない労働者に対する差別にならないか?という論点もあるでしょう。

特に配偶者手当に関しては女性活躍の点から就業調整の要因として指摘されているため、労使の話し合いにより配偶者手当の見直しが望まれるという趣旨で、厚生労働省リーフレット「『配偶者手当』の在り方の検討に向けて~配偶者手当の在り方の検討に関し考慮すべき事項~(令和5年1月改訂版)」に詳しく解説されています。

これからの時代、終身雇用がなくなるかも、メンバーシップ型雇用からジョブ型雇用になるかも、など、少しずつ働き方の変化が進んでいることに気づいている方も多いと思います。その人の職務・役割・能力に関係の無い属人的な手当については今後見直しの方向に進むのではないかと思います。少なくとも新規に就業規則を作成するときには属人的な手当を定めないことをお勧めしています。

日割り計算できる手当

  • 通勤手当

通勤手当を月額で支給していたとしても、手当の趣旨は、通勤に要する交通費ですので、実際に費用が発生しない日については支払わなくても差し支えないと考えられます。ただし、就業規則への定めが必要です。あるいは、日割り計算で控除よりも、これらの手当を日額にする方法もあります。

単純に日割り計算できない手当

  • 固定残業手当

月〇時間の固定残業代を支払う手当のことですが、月に数日しか出勤していない場合には固定残業時間に満たないということがあるでしょう。

では、就業規則に日割計算ができる旨を定めればよいのかと言えば、単純に日割り計算できません。

  • 日割計算した固定残業代 実際に時間外労働した分の残業代・・・実際に時間外労働した分以上に支払っているのでOK
  • 日割計算した固定残業代 実際に時間外労働した分の残業代・・・実際に時間外労働した分を支払わなければならない

固定残業手当を日割り計算するためには、実際に時間外労働した分の残業代を計算して、固定残業手当を超過した額を追加支給するなら可能です。当然、就業規則に定める必要があります。

計算例

  • 基本給(月給)    :320,000円
  • 在宅勤務手当(月額) :6,400円
  • 1日所定労働時間   :8時間
  • 1か月平均所定労働日数:20日
  • 1か月平均所定労働時間:160時間
  • 固定残業時間     :30時間
  • 固定残業手当     :76,500円

1か月平均所定労働日数で日割り額を算出し、当月所定労働日数の半分以上出勤なら欠勤控除、半分未満出勤なら日割り額×出勤日数にする。

(ケース)出勤日数2日(当月所定労働日数21日)、合計5時間残業した場合

基準内賃金の日割り額=(320,000+6,400)÷20=16,320円

固定残業手当の日割り額=76,500÷20=3,825円

基準内賃金(2日分)=16,320×2=32,640円

固定残業手当(2日分)=3,825×2=7,650円・・・①

実際の残業時間分の割増賃金(5時間分)=(16,320÷8)×5×1.25=12,750円・・・②

日割計算した固定残業代(①7,650円) < 実際に時間外労働した分の残業代(②12,750円)

ですので、差額(②-①=5,100円)を追加で支払わなければなりません。

むすび

日額給与にすると、その月の所定労働日数によって手取りが増減することから、毎月一定額が支払われる月給制は労働者の生活の安定のために有用だと思います。かつては日割り計算するのは入社・退職の場合が想定されていましたが、今後は生活と仕事との両立による休業(休職)・復職での日割り計算が増えることも考慮して、もし気になるようであれば基本給・手当の日割り計算について見直しをすることをお勧めします。

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